Achieving Growth

Special Exhibition at the Wakayama Pavilion
胎蔵界曼荼羅と仏たち
いのちを包む慈しみの宇宙
曼荼羅とは、すべてのいのちがつながり、響き合う宇宙の地図。
この「胎蔵界曼荼羅」は、慈悲に満ちた世界をあらわし、
私たちの内なる光を、静かに呼び覚ましてくれる存在たちの姿で構成されています。
中心に鎮座する大日如来は、万物を照らす太陽のように、
すべての生命を分け隔てなく包みこみます。
その周囲に連なる八体の仏・菩薩たちは、
それぞれ異なる知恵と慈しみのかたちとして顕れます。
今回の展示では、それら仏尊の姿に、いのちの進化を記録した映像
受精、細胞分裂、胎芽の形成といった生命のはじまりの記録が重ねられ、
曼荼羅と科学のヴィジョンが交差し、
今、ここに新たな宇宙が立ち現れています。
この曼荼羅は、ただ“観るもの”ではありません。
あなた自身の魂の深層と呼応し、空間に“目に見えぬ慈しみ”をもたらす、霊的な装置なのです。
仏たちの気配が満ちる空間は、日々を祈りとともに生きる場所となり、
心に静けさと芯の強さを育ててくれることでしょう。
この曼荼羅を迎えるということは、
あなた自身が「慈しみの宇宙」とともに生きることを選ぶ、
静かな決意のあらわれなのです。




空海の書と伝わる梵字が
時を超え「光の祈り」として蘇る
KUKAI
梵字 目に見えぬ宇宙の声を綴る文字
梵字とは、単なる記号ではない。
それは、目に見えぬ「大いなるもの」の存在を、この現世に顕現させるために生まれた、神聖なる文字である。
サンスクリット語の音を写したこの古の文字は、単なる表音の記録ではない。
そこには、宇宙の根源的な力、そして仏や菩薩たちの霊性や本質が、象徴として封じ込められている。
一つひとつの梵字は、それぞれに異なる仏尊の化身であり、曼荼羅に描かれる存在たちと響き合い、
それを唱え、書き写す者は、いつしかその仏と心を通わせると信じられてきた。
かの弘法大師・空海は、唐の都・長安より密教の法灯を携え、
日本という霊性の島に梵字の深奥を伝えた。
空海の書にふれると、筆を運ぶ一画一画に、筆致を超えた気の流れと霊的な律動が宿っていることに気づかされる。
それはもはや文字の範疇を超えた、「いのちを宿す線」であり、
一つの梵字が、宇宙の真理を凝縮した小宇宙となって紙上に立ち上がる。
彼が遺した梵字は、仏法を記録するための古文書ではなく、いのちの深淵を覗き込むための鏡であり、
読むのではなく、「感じる」ためのものなのかもしれない。
そこにふれる者の心は、自然と静まり、言葉を超えた叡智に導かれていく。
現代に生きる私たちにとって、梵字とは過去の遺物ではない。
むしろこの混沌とした時代にこそ、その普遍なる響きと形象が、心の羅針盤となり得るのだ。
空海が筆で描いたその一字一字は、天地と響き合い、人の心の奥深くに触れる神聖な「祈りのかたち」。
梵字は、いまなおいのちを伝え、魂を震わせる静謐なる光の言葉である。
そしてこの一字一字は、ただ“観るもの”ではない。
それは、あなたの空間に置かれたその瞬間から、「祈りの場」となり、
日々、言葉では触れ得ない深奥と静かに響き合い続ける。
梵字を迎えるということは
目には見えぬ宇宙の声と、ともに暮らすということ。

存在のはじまりへ ―
空海の祈りと“いのち”の曼荼羅
この世界に、あなたが生まれてきた、その最初の瞬間を見つめたことがありますか。
音もなく、ことばもなく、ただ一筋の光が射しこむように
いのちは、そこに、静かに在ります。
本展は、「いのち」という目に見えぬものに形を与え、
仏たちの慈悲、宇宙の響き、そして人間の誕生の神秘を重ね合わせた、現代の曼荼羅表現です。
そこに描かれるのは、宗教でも科学でもない、
“いのち”という言葉を超えた存在への深いまなざし。
梵字──宇宙の声を写す文字。
曼荼羅──慈悲のかたちを宿す地図。
生命写真──私たち一人ひとりに流れる原初の記憶。
これらが共鳴し、溶け合いながら、今ここにしか生まれ得ない「祈りの場」が生まれました。
観ることは、感じること。
感じることは、深く自分に還ること。
この空間に満ちる静けさと光が、あなた自身の“いのちの響き”と出会い、
やさしく呼び覚ましてくれることを願って。
いのちの神秘
ひかりのはじまりに耳をすます
すべてのいのちには、語られざる“はじまりの物語”があります。
その最も繊細で、もっとも神聖な一瞬
それが、レナート・ニルソンによって撮影された、生命の記録です。
一粒の卵子の姿、そこへ射し込む精子。
そこに生まれる光は、ただの生物現象ではなく、
「あなたがこの世界に存在する軌跡」を描き出す、宇宙からの祝福。
それは、私たちを超えた、大いなる叡智からの“歓迎”のしるしでもあるのです。
この作品は、科学的記録でありながら、
観る者の魂の奥深くに直接語りかける、沈黙のメッセージです。
日々の暮らしの中で、いのちの原初の記憶を灯すこと。
それは祈りであり、深い気づきであり、
大切なものを失うことなく、
「今ここに生きている」ことの確かな証として、あなたとともに在り続けます。
ひとつの瞬間が、世界を変える。
この“いのちの光”は、あなた自身の存在の核心と、
静かに結びついていくことでしょう。

胎蔵界大日如来
Dainichi Nyorai: Radiant Heart of the Womb Realm
By: Masahiko Hashimoto & Sayaka Hashimoto (Feel&Sense) Year:2025
Seed Syllables: “A” (A) and “Om” (On)
Calligraphic Inspiration: Kūkai (Kōbō Daishi, 774–835) — Founder of Japanese Esoteric Buddhism (Shingon School)
Photography: Lennart Nilsson (1922–2017) — Swedish Scientific Photographer / Pioneer in Medical Imaging
Dimensions: H100 cm × W50 cm
作:Feel&Sense (橋本昌彦・橋本さやか)
梵字:「阿(ア)」「唵(オン)」
写真:レナート・ニルソン(1922–2017)スウェーデンの科学写真家/医学映像の巨匠
サイズ:縦 100センチ × 横 50センチ
“The Resonance of A and OM — Sounds from the Source of the Universe”

人は問う。
この宇宙はいかにして始まったのかと。
古の叡智は、その問いに静かに微笑みながら
一つの音を差し出しました。
それが、「阿(ア)」という音です。
この音は、すべてのいのちが生まれるはじまりの息吹。すべての存在の根であり、光の源。
すべてがまだ混沌であったころ、そこには音も形もなく、ただ「阿」の響きだけが、深く優しく満ちていたのです。
空海はその音のなかに、宇宙のすべての本質を見出しました。そしてその響きを、大日如来という祈りのかたちに託しました。
大日如来は語ることはありません。
しかしその沈黙の中には
星々の誕生と死、草木のざわめき、母の胎内の鼓動
すべての生命のリズムが響いているのです。
私たちのいのちもまた、
その偉大なる宇宙の振動の中から生まれ、
やがてまた、ひかりへと還っていく旅の途中にあるのでしょう。
そして、もうひとつの音「唵(オン)」
この音は、宇宙の深奥に満ちる聖なる響きの扉を開く「はじまり」の音。
真言や陀羅尼(ダラニ)の冒頭に現れるこの音は、
わたしたちの心の奥をそっとひらき、
魂をやさしく導いてくれる舟のような響きです。
「阿」が宇宙そのものの本質であるならば
「唵」はその本質にふたたび触れるための、祈りの鍵。
この音を口にするとき、私たちは
小さな自分という内なる宇宙をそっと開き、
あたたかく大きな存在と共鳴しはじめるのです。
たとえ今、世界が混沌に包まれ、迷いや苦しみの中にあっても、
「阿」は、あなたの中にいつも在ります。
「唵」は、その存在を呼び覚ます、やさしい声です。
あなたの内にある光は、この宇宙そのものの光。
決して消えることはない、あたたかくたしかなひかりです。
それは、あなたという存在が、この世界に、今ここに生きて在るという、
かけがえのない聖なる証なのです。